既にタウンページも掲載されており、ホームページにもジワジワと攻めの姿勢を注入していた。そうこうしている内に肌寒くなってくるにつれて年々、忙しさも増していた。家庭教師を始めた当初から考えると1つ1つ進歩を遂げているのを多少、実感するコトが出来ていた。本当にこれは大変、有り難い話だ。そしてそんなある日の夜。たまたま仕事も早く終わって自宅のリビング?で何気無しに横になりながらテレビを見ていた。当時、あるある大辞典、という番組が放送されていたのだが、いつもなら見ないままシラーーーッと済ませていたのだが、その日は不思議と何となくジーーーッと見てしまっていた。それは前々から気になっていた「生命保険の話」という内容だったからだ。チャンネルを変えることもなく眺めていた。何だか分からないが、ある不安が脳裏に浮かんだ。
俺はこのままでええんやろか?、
年上女房だったのだが、金の草鞋を履かせる、という懐的な余裕も時間的な余裕もなく仕事、仕事、仕事に空回り必至で没頭しているだけの毎日。資金繰りに苦しい、と言える程のバロメーターで事業をやっているか、と言われるとマルでそうではない。小銭をチマチマと数えてその日暮らしをしているかのようだった。時間だけが無情にも過ぎていく。私の背中を押す訳でもなく肩をポンッと叩く訳でもない。何も言わないでただ過ぎていくだけだ。今の時間は今しかない。もっと将来的な事を考えるべきだし、もう本当に勝負に出るしかない。この番組がキッカケとなって時間の流れを肌で感じ、避ける事の出来ない事実に危機感を覚え、 自分にもしものコトがあったら家族はどうなってしまうのか、という思いが沸々と湧いてきた。とにかく無性に居ても立ってもいられなかったので次の日早速、いつもお世話になっている保険屋さんに連絡を入れた。今ではもう15年以上も付き合っていることになる。アレやコレやと良いコトを教えてくれるし、タイミングも図ってくれる。良き理解者だ。
そうなってくると将来に目を向けた考えは芋づる式にやってくる。愛娘の幼稚園のこと、家のこと、仕事のこと、生活をするうえでは必ず大切なモノ。仕事には関係無いし公私混同してはならない。しかし自営業であるがゆえ、仕事をするうえでは絶対的に切り離す事の出来ない状況ばかり。ましてや翌年4月には、愛娘が幼稚園に入学する、という事実が自然とやってくる。妻のお腹の中にも第二子が生きている。私は生まれも育ちも姫路だったので、近くの幼稚園で良いやん!!、という気持ちが普通に存在していた。けれども複雑な気持ちにもなっていた。愛娘が姫路の幼稚園に通ってしまうと小学校にも通ってしまう。もちろん高校に通ってしまう。そうなると私はもう姫路から飛び出せなくなってしまう可能性が大きく考えられる。加えて考えると、姫路で良いやん!!、という自分の心境の枠からすら抜け出せなくなってしまう。自分から抜け出せなくなってしまうのは絶対に嫌だ。自分の枠を抜け出すコトをやんないといけない、と毎日のように考えていたからだ。殺風景に生きていては何だ寂しいし、広い世界を見ないまま定着安定させてしまうのは刺激がない。でも姫路は大好きだ。好きで好きでたまらない。生まれた場所だし、高校時代のサバイバルを生き抜いた場所だし、海もあるし山もあるし、友達もいるし先輩もいる。みんな有るしみんな居る。増してや100年以上の歴史を持つ家系に生まれた長男の長男、という使命も存在する。けれども自分の人生だ。我が家のターニングポイントとなってみるのも我が家の家系らしいだろう。
よし!!決めた。絶対に兵庫県を目指してやる。<つづく>