和 田『ダイソンの掃除機やん!!、ええなぁ〜〜〜ッ(笑)』
A 君『結構、高かったですよ。』
和 田『え!?、でも君が買ったんやないやろ!?』
A 君『僕が買いました。結構、高かったですよ。』
和 田『え!?、なんで???、そりゃ高いわッ☆』
あぁ〜掃除機の調子が悪いなぁ〜・・・汗、と言う母親の何気ない日常の言葉。その言葉を静かに握り締めた大人しい中2の息子。彼の頭の中では何やら電撃のようなモノが駆け巡り、瞬く間にパソコンに引き寄せられていった。母親の言葉を一種のニーズとして捉えて、調子悪いんやったら僕が何とかせねば!!!、という使命感に包まれ情熱のようなモノが心と頭と体を揺さぶったのだ。どんな掃除機が良いのか、というのをリサーチすべくパソコンを弾きまくって見付けたのが、ダイソンの掃除機。テレビCMでやっていたのを微かに覚えていたのが功を奏した。メーカーが決まると話はどんどん漸進していく。ダイソンという掃除機、ダイソンという会社、ダイソンという何かをあらゆるポジションから調べに調べて調べまくった。興味や関心とかそんなモノでは説明がつかない程に調べまくった。母親の困った顔を喜びに変える為に、、、そんな思いを胸に抱いて徹底的に調べまくった末、ダイソンの掃除機に隠されたテクノロジーをも発見。棚から牡丹餅のような一石二鳥のような副産物的な衝撃に見舞われた。母親が喜んでくれると同時に自分はダイソンのテクノロジーにも触れることが出来るのだ。
『よしッ!!、ダイソンの掃除機をプレゼントしようぅ〜〜〜ッ☆』
話はトントン拍子で周りを巻き込んだ。家から近くのミドリ電機へ連れていけ、と言わんばかりの激しい衝動が期末考査直前をも度外視させて母親の背中を押した。到着するや否や慣れない店内を掛け回りまくった挙げ句、掃除機売り場に猪突猛進。目の前にして、これがダイソンか!?、と言わんばかりの凝視で睨めっこ。店員さんとの、あぁ〜だ、こぉ〜だ話も他所に眼差しは既にダイソン釘付け。そんな高いのん買わなくてええよぉ〜・・・汗、という母の言葉なんて一切無視。そんな頑固な中2の瞳は確実に血走っているのは無理も無かった。
『僕がお金出すんやからええやん!!、プレゼントしたいねん。お母ん、困らなくて済むやん、、、』
小さい頃から親が貯めていてくれたお年玉やお小遣。塵も積もれば山となり、14年の時を経て気が付くと希望の山へと変貌を遂げていた。そしてそれは今では親の気持ちに刺激を与えている。小さい頃からの歴史や思い出、感謝の気持ちが収束し積み上げられた愛情の結晶。親のオカゲで、彼はこの瞬間を迎える事が出来たのだ。目に見える価値が目に見えない価値へとスワップする。価値が下がった訳でも上がった訳でもない。喜びと感動を見据える大きな可能性を秘めた産物を手に入れることが出来るのだから、彼はそれで親に十分感謝している。貯めてくれていなかったならば今のこの瞬間は無いし、彼の感性も迸ることは無かったはずだ。普段は言葉数が少ないけれど、お金よりも何よりも大切なモノを親からはいっぱいもらっている。だからこそ言葉ではなくて行動で示したかったのだろう。この機会を活かして困っている母親の言葉を喜びと明るさに変えたかったに違いない。その時が今いよいよやって来たのだ。
彼は単なる掃除機を買ったんじゃなくて、自分の将来性に大きな影響を与えるキッカケを得ることが出来た。お金を出して母にプレゼントした、という感覚はもちろんのコト一切無い。むしろ、親が困っていたのを子供として解決した、という感覚の方が適切だろう。それに伴って、生まれて初めて感じたインスピレーションにより、ダイソン掃除機の向こう側に気付いたのは、彼にとって最高のご褒美に違いない。誰がこの掃除機を創ったのか!?、なんて事すら疑問に思う事も無くダイソン掃除機に惚れ込んで、ほんのちょっとの何気ない母親の言葉でピンッときて、母親にプレゼントしたい!!、と思わせるような衝動のテッペンに居座っていたのだから、、、。掃除機の事なんてマルで分からない人であっても、買いたい!!、と思わせるような感動を与えられる何かを創ってみたいという大きな志の幕開けと言えます。遠からず近からず将来的には、彼によって創られたモノが日本だけではなく世界中の多くの人達を必ずや幸せにするでしょう。