トツゲキ人生「困難」

夏の暑さも日を追う毎に、小マシになっていた9月の早朝。とある一本の電話が朝の目覚めを誘導した。電話に出た家内が血相を変えて呼びに来る。税務署から電話だよ!!、とのこと。朝起きて歯磨き洗面の寸前だったこともあって頭の中は間違いなく呆然。いつもの尖った感覚は鈍かった。9月10月のこの時期に?、ナゼに電話?、さっぱり分からずとりあえず電話に出て話を聞いてみた。電話の面持ちは普通な印象だったが、内容そのものは間違いなく普通ではないのを明らかに理解出来た。署員さんいわく、調査に行きますので・・・!!、という一声。起業後、初めての言葉に頭は真っ白。だからと言って特に何も悪い事をしていない。それでも気分は憔悴。そりゃそうだ。税務署の方がわざわざ自宅にやって来て、税務関係書類を調査するのだから無理もない。火の無いところに煙は立たない、という見解を持ち得ているからだろう。自分の気が付かないところで煙は立っていたのか・・・。頭の中では、なぜ、なぜ、なぜ、という自問自答が巡っていた。まず何をすべきで何を用意すべきなのか、とことんサッパリ分からない。どうすれば良いのだ?!、事の重大さに頭はパニック。考えも焦る。いつもの冷静さが覚束ない。とにかく落ち着きを取り戻す為に朝ご飯を食べるものの味がしない。そこで環境を変えて台所で牛乳を飲みながら考えた。ただ今の現状で1つ言えることは、自力では全く対応出来ない、ということだ。誰に協力を願うべきなのか、をひたすら考えた。気が付くまでにそう時間は掛からなかったはずだが、知らぬ間に1時間以上も過ぎていた。時間の流れすら、正常に感じることが出来なくなっていた。

税務と言えば税理士の先生ではないか?!、一筋の光が射した。以前に記帳相談でお世話になり掛けていた折、私の体調不良が原因でお断りせざるを得なかった事があった。当時の事を思い出すと本当に情けなくて仕方が無い。そればかりでなく先生にも失礼を働いてしまったので大変、申し訳無い気持ちでいっぱいである。とは言え、そんな事を言ってる場合ではない。恥を忍び、満を持して再び相談させて頂く事を決めた。デスクの名刺に手をやりドキドキしながら電話をした。「先生!ご無沙汰致しております。以前記帳指導でお世話になりました和田成博です。当時は本当に申し訳ありませんでした。そこで折り入って御相談があるのですが、こんな私でもお話聞いて頂けますか?!」、恐らく電話越しでも、その必死さは伝わっていたに違いない。ここで先生に見放されてしまっては、もう背水の陣であった。それを感じてか、快く相談に応じてくれた。胸が詰まる思いだった。相談当日、ご挨拶も早々に本題に入った。税務署の方から、調査をします!、という事で連絡がありまして・・・。その言葉を察して素早く答えを出して下さった。税務調査、とうものらしい。法人なら3年に1度、個人なら7、8年に1度のペースで、税務署の署員さんが帳簿なり何なりを調べにやって来るようなのだ。税理士の先生から幾つか質問を経て以後、先生の元で税務調査への対策として戦略を練って下さるコトとなった。私の頼りない感じは正に一目瞭然だったに違いない。恥も失態も何もかも全て、さらけ出して今後ご尽力賜らせて頂くしかない。全てを任せることにしよう。何とかなりそうな雰囲気を宿しながら相談も一様に完了し先生からの、大丈夫ですよ!、という一言に心が少し救われた。同時に、世の中へ大きく羽撃くタイミングであることも悟った。1人で世の中に羽撃くには、限界があるのを従順に承知していたものの、税務調査の連絡をキッカケに改めて気が付いたのだ。不幸中の幸い、に導くしか道はない。