プロ家庭教師の熊橋実里,いつも本気!,反省と精進。

 先日、ご連絡をいただいたお客様のところへ学習相談と体験授業をしに行かせていただく機会がありました。結果は、良いお返事を頂くことはできませんでした。様々な要因があったかもしれませんが、私のさせていただいた授業が体験のお客様にとって良いと感じるものではなかったことも一因でした。お返事を伺ったときはショックでしたし、決して適当にやったわけではない分、「あれがダメだったのか」というようなものもすぐには思いつきませんでした。ですが、この経験が、改めて体験授業の難しさを知り、自分の今の授業について見つめ直す良い機会を私に与えてくれました。今回はその経験と、それを踏まえて今後どのような授業を目指して行くべきかについて書かせていただきたいと思います。

 今回のお客様の体験授業では、数学をさせていただきました。学校のワークを使って問題を解いていくという進め方でした。常日頃から心がけていることと同じように、もしその単元以外のことで分からないことが出てきたら、サラッと教えるのではなくしっかりと復習をする。解き方を教えて確認した後は、類題を作ってそれを解いてもらう。そうしたことを心がけて授業をさせていただきました。結果としては、授業は今一つ盛り上がらず、解ける問題が増えていっても私とお客様の間で「解けるようになった!」という大きな喜びも共有されなかったように感じます。

 再びこういった状況に陥ってしまうことのないように、また、現在担当させていただいている生徒様の授業をより良くできるように、改善策を考えました。まず一つ目は、「生徒様のことを知ること」です。これは勉強面でもそれ以外の面においても言えることです。特に勉強面においてですが、先に述べたように今回私は学校のワークを初めから解いていくような授業をして、最初に苦手なところや分からないことを尋ねませんでした。ワークを解いていく中でどこが分からないのかを把握しようとしたのですが、それでは私だけが分かっている状態になってしまうことに気づきました。生徒様は自分の分からないところに気がつけないまま、進んでしまっていました。あらゆることにおいて、言語化することは自分の頭を整理することにつながります。私もこの学習指導プロセスを、「どうすればよかったんだろう」「次はどうしたらいいんだろう」というモヤモヤが解消できれば、という気持ちで書いています。家庭教師の学校や集団塾との違いの一つは「自分の分からないところまで立ち返ることができる」ということだと考えます。その家庭教師の授業の長所を全く活かせていない授業をしてしまったと思います。分からないところが明確に自分で説明できればそこを集中してできるようになれば良いです。どこが分からないのかもあまり分かっていなければ、分かることと分からないところの境界を見つけるためにはじめから順番にやっていくことができます。今後は、生徒様の分からないポイントを一緒に見つけて、それを分かるようにしていくということを徹底した授業を進めてまいりたいと思います。

 二つ目は、楽しい授業をするということです。それだけだとかなり抽象的なので、具体的に書かせていただきます。「勉強=楽しくないもの」というイメージを抱いているでしょうし、私も学生の頃は自分が分かることは楽しいけど分からないことは楽しくないと思っていました。「何でも最初から分かるわけがないし、分からなくて楽しくないなら分かるまでやれ!」と自分自身に向かってなら言いますが、「分かるから楽しい」に到達するまでの楽しくない期間を、いかに楽しくできるかが私がすべきことだと思いました。実際、最終的には自分が努力して覚えるしかない英単語でも、私たちが普段話しているなかで使っている英単語の意味を教えると、生徒様は「ああ!確かに!」という反応をします。例えば、最近たくさんの種類がある、携帯電話でお金を払うことができる「~ペイ」の「pay」は「お金を払う」という意味なんだということを教えると、生徒様は「ああ~!そういう意味だったのか!」という反応をしてくれます。そして意味も一発で覚えられます。そういう楽しさを提供することを大切にしていきたいと思います。

 三つ目は、生徒様の小さな成功体験を積み重ねていくことです。誰でも、できないことがあると悲しいし、悔しい気持ちになります。イライラすることもあります。自分の現状を自覚するということはもちろん必要なことですが、それは然るべきタイミングでするべきことなのかもしれない、と思いました。まずはできることを増やすことが大切で、そうすることによってもっとできるようになりたいという気持ちが強くなっていくと思います。もちろん、自分がまだまだだということを自覚することによってその現状を脱却するために頑張れる人もいるので、一概には言えません。今回私は、あまりにもお客様が自分の力でやることに意味があるという考えになってしまっていました。その根底には、説明するだけの授業は面白くなくて、自発的に考えることが重要だという考えがありました。その考えが間違っていたというわけではないと思いますし、説明ばかりの授業だとそれを聞いて分かった気になって、いざ問題を解こうとすると全然解けないという事態になりかねません。ですが、とにかく問題を解き進めて、間違えたらそれをできるようにしていくという授業の進め方は、このときは順番が逆だったのだと振り返っています。この進め方では「解けなかった」という印象が強く残ってしまいます。まずは一緒にできるようになってから、自分一人で問題に挑戦する、という順序の方が、「できた!」という印象が残るのではないではないか、そう考えました。先にも述べたように、自分の現状を理解することももちろん必要なことではありますが、体験授業では「できる」という成功体験を少しでも多く積み重ね、「自分にはできる」、「分かるって楽しいんだ、嬉しいんだ」という気持ちを持っていただくことが大切だと気づきました。お客様の思考をポジティブに変えることが体験授業における私のすべきことであると思います。

 以上が、私が今回の経験を踏まえてどのようにしていくべきかを考えたことです。もちろん正解は一つではないですし、お客様一人一人にとってそれぞれの最善策があります。ですが、基本としてこうしたことを心掛けて、誰にでもできるようなものではなく、私にしかできない授業を展開していきたいと考えております。

熊橋 実里